一年で最も寒さが厳しいこの時期は、
暖炉や焚き火、囲炉裏のある宿や施設で
ゆらめく炎を見つめながら心身ともに温まる「癒しの旅」をしてみませんか。
冬しか味わえない、大人のぜいたくなひとときを
大切な人とともに過ごしてみては。
元箱根山のホテル
ホテル生まれの薪が燃える
クラシカルなラウンジ
芦ノ湖畔、岩崎小彌太男爵の別邸跡地に立つ「山のホテル」は、美しい自然に囲まれた本格リゾートホテル。冬の晴れた日に、庭園や最上階の客室から望む白雪の富士は圧巻だ。
開業から76年、建て替えにより形は変わっても、別邸時代から受け継がれてきたホテルのシンボル的存在が、マントルピースのある暖炉だ。マントルピースとは、壁付きの暖炉に施した装飾のこと。本館1階のラウンジに設置された風格漂う暖炉に、ホテルのロゴマーク「三本杉」の装飾を見ることができる。
特筆すべきは、箱根周辺で伐採された木や倒木が、薪として再利用されていることだ。毎年、ホテルの庭園スタッフが丸太を加工し、2年近くかけて乾燥させ、燃えやすい薪に仕上げる。暖炉にくべられた薪が燃える炎、時折小さくはぜる音、ほんのり鼻腔に感じる煙の香り。時間をかけて薪が作られていることを思うと、より特別なものに感じられる。
ラウンジでは定期的にピアノの生演奏も楽しめる。コンサートに合わせて出かけるのもおすすめだ。
十国峠THE GLAMPING 箱根十国峠
輝く夜景や星空も
山頂の絶景を満喫
標高750mの高台に15棟のコテージが立ち並ぶ「THE GLAMPING 箱根十国峠」。開放的な客室に併設された広いデッキでは、全室バーベキューや焚き火を楽しめる。彩り豊かな厳選食材はもちろん、調理器具や食器、アメニティーもすべて用意されているのがうれしい。
夕暮れが迫る頃、デッキの焚き火台に薪を並べ、火をつける。はじめは心もとない炎がだんだんと力強くなると、アウトドア気分も高まってくる。ディナーは、十国峠の名前の由来にちなみ、静岡や近隣県産の野菜や肉、魚介をふんだんに使ったメニューだ。デッキのグリルで焼いたり、煮込んだり、簡単な調理だけで食べられる。
日が落ちて冷え込みが厳しくなると、焚き火のありがたさがより沁みる。山の澄んだ空気が心地よく、遠くには夜景、見上げれば星がきらめく。薪は無料で追加可能なので、早くになくなってしまっても安心だ。時間を忘れてゆったりとくつろぎ、家族や友人との会話に花を咲かせたい。ここでは都会では過ごせない、特別な冬時間を堪能できる。
仙石原ライムリゾート箱根
火を囲む円形ソファ
思索や憩いの場に
仙石原高原に佇む「ライムリゾート箱根」は、合宿型の滞在を提供するリゾートホテルだ。設計は、パリの「ポンピドゥー・センター」や、小田急ロマンスカー「GSE」などを手がけた建築家、岡部憲明氏によるもの。
建物は、空間全体を見渡せる円環状にデザインされ、自然なコミュニケーションや感性を刺激する工夫が随所に施されている。ゲストルームやダイニング、新姥子温泉を引いた大浴場のほか、シアタースペースや大小ラウンジを備え、企業のキックオフミーティングや研修などに最適。貸し切りウエディングにも利用されている。
施設の中心となるのが、エントランスからすぐのスペースに設けられたフード型の暖炉。暖かな火を囲むように円形に配されたソファには、自然に人が集まる。ここで好きなだけ読書を楽しんだり、思索を巡らせたり、語り合ったり、過ごし方は自由。ゆらめく炎に癒されることで生まれた“何か”は、新たな気づきや活力をもたらしてくれるはずだ。
貸し切りメインの施設ではあるが、日によっては個人利用も可能。プライベート別荘のような感覚で滞在できる。
強羅
箱根の我が家でくつろぐ
静かな大人の夜時間
ホテルのコンセプトは「箱根の我が家」。自宅のようにくつろいでほしいと「リビングルーム」と名付けられたラウンジでは、暖炉で炎がゆらめく。薪が燃える音や香り、じんわり伝わってくるぬくもりに、リラックスしながらも五感は研ぎ澄まされるよう。夕方のラウンジでは、宿泊者向けにお得な料金でフリーフローを用意。夜にはバーラウンジとなり、静かな大人の時間を堪能できる。
火を扱うことの安全や無病息災などを祈願して、毎年10月1日に催されるのが「暖炉開き」だ。箱根神社の神職による祝詞から始まり、暖炉のお清め、火入れ、スタッフや宿泊者が参加する玉ぐし奉納も行われる。珍しい火入れの神事に合わせて泊まりに来る人もいるという。
ぜひおすすめしたいのは、2日目を有意義に使える連泊。館内の「スパIZUMI」で、自然由来の製品にこだわったトリートメントを受けるもよし、早雲山駅までの無料送迎を利用して、ロープウェイで大涌谷や桃源台に足を延ばすもよし。夕方「我が家」に戻れば、暖炉でゆれる火がやさしく迎えてくれる。
DATA
ハイアット リージェンシー 箱根 リゾート&スパ
御殿場
富士一望の”リビング”
星空の下で焚き火を
紅富士や冠雪など多彩な表情を見せる富士山を正面に、非日常感あふれるグランピング体験ができる「藤乃煌 富士御殿場」。独立した寝室とリビング、ダイニングをもつスイート仕様のキャビンが19棟並ぶ。そのすべてに備わるのが、焚き火を楽しめるアウトドアリビングだ。ゆらゆらと動く炎や静かに燃える真っ赤な熾火を眺めながら、家族や友人とじっくり語らいながら夜を過ごせる。薪は火持ちのする広葉樹。夕食時にスタッフが着火してくれるので安心だ。
夕食は、用意された食材を自分たちで焼いて味わうバーベキューディナーも選べるが、焚き火もできるのはグランピングディナー。肉を焼いたりスープなどを温めたりするだけでコース料理を堪能できる。熱々のアヒージョやダッチオーブンの煮込み料理を味わい、ワイルドなトマホークステーキを頬張れば、アウトドア気分が大いに盛り上がる。2024年にオープンした、富士山が一望できる貸切露天風呂も魅力。
箱根湯本
里山風情にひたる
本格的な囲炉裏料理
“古民家風の里山温泉”がコンセプトの「箱根湯寮」は、四季折々の自然を感じながら、趣ある湯に浸かれる日帰り温泉。湯上がり客はもちろん、ここでの食事を目的に訪れる人も多いのが、本格的な囲炉裏料理を堪能できる「囲炉裏茶寮 八里」だ。店内に足を踏み入れると目に入るのは、囲炉裏が切られたテーブルや、階段箪笥など時代物とおぼしき数々の調度品、炉端で高温の炭を扱う料理人の姿。昔ながらの懐かしい里山風情が、訪れる人の心を和ませてくれる。
メニューの主軸は「炉端」と「炙り」。「炉端」は、800℃近い高温になる炭で、料理人が食材を焼き上げて提供。約20分、じっくり時間をかけて香ばしく焼かれたヤマメはふっくら、ホクホク。秋冬は、富士山の湧き水で育った「金太郎マス」を味わうこともできる。
一方、「炙り」はテーブルの炭で、自分で食材を焼いて味わう。国産牛や有頭海老、季節の野菜がセットになった「七輪炙り山海の八種盛り」が人気だ。
店内は思いのほか広く、囲炉裏席のほかにも子連れに適した座敷、掘りごたつやカウンター席などがあり、さまざまな客層が利用しやすくなっている。