湯と恵みのやわらぎ旅NEW!

凛とした空気に包まれる冬の箱根。山々の稜線や静かな星空を眺めながら、湯けむりたなびく湯処で心身をゆるめ、旬の食材を生かした料理に心満たされる。この季節だけの、至福の温泉旅へ。

箱根有数のパノラマを
客室露天風呂と大浴場で

東棟最上階にある「佳ら久ルーム」の客室露天風呂。湯上がりは、テラスチェアに座ってリラックス。芯まで温まった体にひんやりした空気が心地よい。
額縁のような開口部真正面に、明星ヶ岳を望む大浴場「明星」。

 旧宮家や財閥の別荘が今も残り、箱根の交通の要衝としても機能する強羅。町のシンボル明星ヶ岳、そこに連なる山の稜線や相模湾、これら壮大なパノラマを一望する温泉旅館が「箱根・強羅 佳ら久」だ。
 この宿ならではの魅力は、70ある全客室のバルコニーに配された温泉露天風呂。時間も誰も気にせず、目の前に広がる自然との一体感を享受する湯浴みは、この上ないぜいたくだ。大浴場には、空に浮かぶような開放感が味わえる「蒼海(そうかい)」、明星ヶ岳の「大」の文字を正面に望む風雅な「明星」、2つの展望露天風呂も。男女入れ替え制のため、宿泊することで両方入れるのもうれしい。温泉は、保温効果が高く湯冷めしにくいナトリウム塩化物泉。源泉は2つあり、同じ泉質ながら客室露天はしっとり、大浴場はさらりとした肌当たりに感じられるという。
 メインダイニング「六つ喜」で味わえるのは、旬の素材をふんだんに取り入れた、彩り豊かな季節のフルコース。料理長は、国内外のVIPをもてなしてきた確かな腕の持ち主。素材ありのままの味や香りを生かした、美しく繊細な一皿ひとさらに、五感も心も満たされる。

太刀魚など地ものの鮮魚が並ぶお造りは、
箱根の自然の造形美をイメージしたオリーブウッドの一枚板で提供。

DATA

箱根 ・ 強羅 佳ら久

TEL:0460-83-8860

住所:神奈川県足柄下郡箱根町強羅1300-8

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心と体をやさしく包む
乳白色のにごり湯

木と竹のぬくもりに包まれ極上の湯に浸かれる貸し切り露天風呂「かぐや」。
チェックイン時に予約を。

 美術館が多く集まり、自然と親しむハイキングも楽しめ、御殿場にもアクセスしやすい仙石原は、箱根観光の拠点に最適な高原リゾート。充実の一日を過ごした後は、温泉情緒あふれるにごり湯に浸かり、心と体をリフレッシュしたい。
 そんな滞在におすすめなのは、早川の近くに佇む和モダンな温泉旅館、「川涌(かわら)の湯 マウントビュー箱根」だ。古き良き温泉旅館のくつろぎと、ホテルのような機能性を調和させた旅の宿で、国内外幅広い世代に支持されている。
 宿の“宝”である温泉は、大涌谷の地中深くで育まれた、乳白色の硫黄泉。早川と大涌谷から一字ずつとり、「川涌の湯」と名付けられた源泉は、硫黄分や鉄分、ミネラルなどを豊富に含み、体を芯からじんわり温め、肌を健やかに保つ美肌効果も期待できる。非日常の温泉気分が高まる、独特で芳醇な香りも「川涌の湯」の魅力。〝天然のアロマ〟ともいえる湯の香を全身にまとうことで、続く旅の余韻にも癒される。
 この源泉は男女別の露天風呂で楽しめるが、ぜひ堪能してほしいのが、誰気兼ねなくプライベートな湯浴みを楽しめる貸し切り露天風呂。凛とした竹林を眺めながら、乳白色の湯に身を委ねるひとときは、これ以上ないぜいたくで、竹林がライトアップされる夜は実に幻想的だ。

夕食は旬の食材を使い、季節感を大切にした「和食会席料理」。
昔懐かしい瓶入り牛乳は湯上がりにぴったり。
館内のショップで購入できる。

DATA

川涌の湯 マウントビュー箱根

TEL:0460-84-6331

住所:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原885

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昼は稜線、夜は星空
庭園越しに楽しむ眺め

昼間は箱根外輪山の稜線を、夜は星空を眺めながら湯に浸かる。
外輪山は、秋は紅葉、冬は日によって冠雪で彩られる。

 大自然に抱かれた、ヨーロッパの古城。そんな外観の「箱根仙石原プリンスホテル」は、全客室から箱根外輪山の雄大な景色を望むぜいたくな宿。「住む美術館」をコンセプトに、館内の随所に展示されたアート作品が、ゲストの心を和ませる。
 館内の「姥子温泉」では、2025年3月に露天風呂を大幅リニューアル。要望の多かったサウナを新設し、枯山水の庭園を設えた。湯けむりのなか、箱根外輪山の稜線を庭園越しに眺めながら味わう露天風呂は格別。湯に浸かって一息つくと、心がすーっと静まっていく。単純温泉の柔らかなお湯は、長湯しても湯当たりしにくく、心身をそっとほぐす。
 夕食は、小田原の「いいちみそ」が香る白いビーフシチューや箱根山麓豚のステーキなど5種類からメインを選び、サイドメニューはビュッフェ形式で楽しむスタイル。静岡県産桜エビ、曽我の梅、秦野野菜など、季節ごとの土地の恵みが皿を彩る。
 2026年1月15日から3月31日までは、宿泊体験型謎解き「ドリームレコード」を開催予定だ。館内を回遊し、見つけた手がかりをもとに謎解きに挑む宿泊プランを用意している。

ダイニングの天井には、ステンドグラス風の意匠。
ビュッフェの人気メニュー「黒カレー」は富士山御殿どりや香味野菜をスパイスでじっくり煮込み、黒ゴマペーストやはちみつで仕上げた深みのある味。口にすると驚くほどまろやかで、老若男女に愛される一皿。
2025年3月に完成したサウナ。温まったあとは、外の水風呂で“整えタイム”を。

DATA

箱根仙石原プリンスホテル

TEL:0460-84-6111

住所:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原1246

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建築美が魅了する老舗で
レトロな湯浴みと特製鍋を

タイルや浴槽など、レトロな趣が漂う貸し切り風呂。
朝は5時から、夜は24時まで利用可能。

 明治16年に創業、与謝野鉄幹・晶子、竹久夢二、中国革命の父・孫文らに愛された、箱根屈指の名旅館「三河屋旅館」。大正年間に建てられた、唐破風入母屋(からはふいりもや)造りの玄関が迎える本館は、国登録有形文化財。破風に設けられた見事な懸魚(げぎょ)、玄関の花頭窓(かとうまど)、明かり取りや空気抜きの引き窓の意匠など、随所に職人の技や遊び心があふれ、見どころが尽きない。
 歴史ある趣はそのままに快適性を高め、2020年から新たな歴史を刻み始めたのが「箱根小涌園 三河屋旅館」だ。温泉は無色透明で柔らかな、肌にやさしい小涌谷温泉。宿の創業者が、かつて「小地獄」と呼ばれた地から噴泉を引いて浴場を開いたのが始まりとされ、大浴場の露天風呂、半露天の貸し切り風呂はかけ流し。レトロな雰囲気の貸し切り風呂は、大人2人にちょうどよいサイズ感で、予約なしで利用できるのがありがたい。
 和モダンな食事処でいただく夕食は、手の込んだ前菜盛り合わせから始まる日本料理。メインは、創業時から続く「三河屋特製米麹甘酒鍋」だ。箱根越えの旅人に活力をもたらした甘酒から着想した鍋料理で、昆布と鰹でとっただしに約8時間煮込んだ米麹を合わせ、国産和牛や旬の野菜を味わう。滋味あふれる料理と名湯で心身を温めれば、活力も高まりそうだ。

上質な国産和牛や季節の食材を味わう「三河屋特製米麹甘酒鍋」。
鍋底には、味の決め手となる米麹の粒が隠れている。
寺社建築を思わせる本館。1階には宿の歴史をたどる貴重な品々を展示する資料室もある。

DATA

箱根小涌園 三河屋旅館

TEL:0465-43-8541

住所:神奈川県足柄下郡箱根町小涌谷503

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江戸時代から現代まで
箱根に焦点当てた美術展

二代歌川広重「箱根七湯一覧」 1861年 箱根町立郷土資料館蔵

古くから風光明媚な自然や温泉(hot spring)が、
旅人の心身を癒してきた箱根。
この地で、 “spring”の名を冠した美術展が幕を開ける。

 仙石原の森に佇み、モネやルノワールのコレクションで知られるポーラ美術館。12月13日~2026年5月31日に開催される企画展「SPRING わきあがる鼓動」では、開館以来初めて、箱根という土地に焦点を当て、江戸時代の浮世絵から彫刻、工芸、映像やインスタレーションなどの現代アートまで、約120点を展示する。
 二代歌川広重が描いた「箱根七湯一覧」は現代でいえばガイドマップのような役割を果たしていたという錦絵。箱根全体と7つの温泉地を捉えた俯瞰図だ。江戸時代から箱根が温泉地として人気だったことがうかがえる。初代広重の「箱根七湯」の名所絵と一緒に見比べてみるのも楽しい。
 浮世絵で注目したいのは、三代歌川豊国「東海道五十三次の内 箱根 初花(はつはな)」。歌舞伎「箱根霊験躄仇討(れいげんいざりのあだうち)」の名シーンを捉えた役者絵で、病身の夫・飯沼勝五郎の回復を願い、箱根の滝に打たれる初花の姿が迫力たっぷりに描かれる。願掛けが叶うとの伝承から、初花の図はご利益のある絵とされ、水しぶきを上げる滝の大胆な青と白は、当時のファッションで大流行した瀧縞と呼ばれる縞柄を思わせる。
 舞台となった滝は今はもうないが、「願掛けの滝、霊言あらたかな富士山など、知っているようで知らない箱根の“マジカルな部分”を、展示を通して感じてほしい」と学芸員の今井敬子さんは語る。

三代歌川豊国「東海道五十三次の内 箱根 初花」 1852年 箱根町立郷土資料館蔵
※展示期間:12月13日〜2026年3月5日
杉本博司「富士図屏風、大観山」 2024年 作家蔵 ©Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi

幻想の湖畔、春の森
“水”が導く感性の旅

 展示室でひときわ目を引くのは、幅5メートル超の杉本博司「富士図屏風、大観山」。元旦の富士と芦ノ湖をデジタルカメラで捉え、屏風に仕立てた一枚だ。朝焼けで浮かび上がるシルエットは凛として神々しく、古くからこの山を信仰してきた日本人の美意識が偲ばれる。
 本展は、箱根を満たす〝水の物語〟を、アートを通して体感する旅でもある。丸山直文「水を蹴る・仙石原(あたりに)」は、仙石原の森から得たインスピレーションをもとに描かれた、色彩豊かな作品。水に浸したキャンバスに絵の具を滲ませたみずみずしい作風は、一足早い春の訪れを予感させ、見る者を自由なイマジネーションの散策に誘う。
 「温泉や滝、富士山に湖……箱根にとって、水は潤いと生命の象徴です。水とアートが重なり合うこの地の、重層的で奥深い魅力を感じてもらえるはず」と今井さん。箱根という土地が持つ生命力と躍動感を、存分に堪能できる本展。沸き上がる命の鼓動に、そっと耳を澄ませたい。

丸山直文「水を蹴る・仙石原(あたりに)」 2023年 作家蔵
©Naofumi Maruyama, Courtesy of ShugoArts, Photo by Shigeo Muto

春を感じる展覧会スペシャルメニュー

SPRING RISING 5,500円

展覧会で心を満たしたあとは、館内のレストランで一足先に春を感じるフルコースを。地場の食材をふんだんに盛り込んだメニューは、どの皿も色鮮やかで心躍る。オードブルは春(spring)を迎える楽しさを表現したサラダブーケ。スープは浅間山の伏流水で仕込む、大平台の豆腐屋の豆乳がベース。メインの足柄産鹿肉のポワレは、酸味のある赤すぐりのソースが、味に躍動感を添える。

レストラン アレイ 
営業時間:11時~17時(L.O.16時)

DATA

ポーラ美術館

TEL:0460-84-2111

住所:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285

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