暑さが和らぎ過ごしやすくなる秋は、
野山を歩くには最適なシーズン。
箱根在住の登山ガイド、金子森さんに
箱根旧街道を歩く魅力や楽しみ方をうかがいました。
400年前の石畳を歩き
江戸の旅人に思いを馳せる
東海道の中でも宿場文化と自然の美しさが混在し、往時の雰囲気が今も随所に垣間見られるのが、箱根旧街道の魅力です。
旧街道と重なる須雲川自然探勝歩道に入ると人がぐっと少なくなり、川音も心地よく、一気に時代をさかのぼった気持ちになれます。畑宿の発電所の下に徒渉できる場所があるのですが、秋はこの辺りの紅葉が見事で見応えがありますよ。
須雲川を越えると始まるのは、旧街道を象徴する石畳の道。江戸時代の石が現存する区間も残され、400年前からそこにある石の上を歩くことで、江戸の旅人に思いを馳せるのも感慨深い体験です。
しばらく歩いて到着する畑宿は、箱根寄木細工発祥の地。工房や土産物店に立ち寄ってみるのも楽しいですよ。畑宿から先は最大の難所といえる七曲がり。これがなかなかキツいのですが、“天下の険”とうたわれた道のりの先にある、「甘酒茶屋」で味わう甘酒は格別です。
ぜひ一泊して感じてほしい
昔と今の箱根の魅力
さらに石畳を上り、元箱根からゴールの箱根関所までは下り。芦ノ湖が見えてくるとホッとします。
元箱根から恩賜公園まで、江戸から続く杉並木を歩けば、旅人を風雨や日差しから守る役目をしてきたのだと気付かされます。何度も来ている箱根にも、こんなところがあったのかと、驚かれる方も多いです。
人とのふれあいも、旅をより印象に残るものにしてくれます。旧街道もそうですが、箱根の魅力は、旅人を「ようこそ」と迎える、宿場町ならではのおもてなしの文化にあると思います。旧街道にある6カ所の施設で、持参したマイボトルに箱根の水を無償で提供する「寄人プロジェクト」が始まっていますが、それも水を介した立派なおもてなしですよね。
箱根にはいい温泉、いい宿がたくさんあります。ぜひ一泊していただいて、昔の箱根と今の箱根の両方を楽しんでいただけたらと思います。