箱根で楽しむアートとグルメのマリアージュ10選。
名画と抹茶、ガラスアート×絶品ステーキetc.
この春、目と舌で心ゆくまで堪能するNEW!

箱根の美術館の魅力の一つは、美味しいお店が入っていること。芦ノ湖畔に建つ箱根・芦ノ湖 成川美術館のティーラウンジで味わう抹茶セット、高級鉄板料理「うかい亭」を運営するうかいグループの総料理長による本格ステーキが堪能できる箱根ガラスの森美術館、彫刻の森美術館では名彫刻を眺めながら絶品スイーツに舌鼓を打つ。この春は、箱根の美術館でアート&イートな旅を楽しんでみて

元箱根

湖畔の美術館で楽しむ
箱根の風景と抹茶の調べ

ティーラウンジからの絶景はまるで一枚の絵画のよう。季節や時間ごとに変わるのでずっと眺めていられる。

 芦ノ湖畔の高台に立つ成川美術館。現代日本画を中心としたコレクションから、季節ごとに約80~100点を選んで展示する。作品の収集から展示作品のセレクトまで、成川實館長が自ら手がけている。
 美術館の設計は、東京・両国の新国技館を手がけた建築家・今里隆によるもの。モダンな和風建築で落ち着いた雰囲気のなか、作品を鑑賞できる。
 館内でおすすめのスポットはティーラウンジ「季節風」だ。大きな窓から芦ノ湖と富士山を眺めながらいただく「抹茶セット」は格別の味がする。小田原の老舗・盛月堂の上生菓子の上品な甘みとよく合う抹茶は、京都・宇治産。口当たりがなめらかで、すっきりとした苦味がさわやかな余韻を残す。
 抹茶と風景を堪能していると、ゆっくりと観光船が出航するのが見えた。まるで“動く絵画”を眺めているようだ。ここで約20年勤務するスタッフが、「毎日この風景を見ていても飽きませんよ」と言っていたのもうなずける。

「抹茶セット」(1,100円)。抹茶の器は陶芸家・三上亮の作。季節ごとに変わる上生菓子も楽しみ。
5つの展示室でゆったりと名画を鑑賞でき、写真撮影も可能。

DATA

箱根・芦ノ湖 成川美術館

TEL:0460-83-6828

住所:神奈川県足柄下郡箱根町元箱根570
開館時間:9時~17時
休館日:無休
入館料:一般1,500円
箱根登山電車箱根湯本駅からバス35分

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小涌谷

壮大な壁画に迎えられ
庭園の日本家屋で憩う

パネル1枚1枚に手描きして仕上げた。構想から完成まで5年を費やしたという。6/2㈰まで本作の小下図を展示中。

 箱根にある美術館の中でも比較的新しい岡田美術館は、2013年10月に開館。日本を含む東洋の美術品や考古遺品などを常時約450点公開している。
 美術館に入るとすぐに、縦12 m、横30 mの大壁画に描かれた風神と雷神が迎えてくれる。「風・刻(かぜ・とき)」というこの作品を制作したのは日本画家・福井江太郎。岡田美術館の守り神になるようにとの願いが込められているそうだ。
 明治半ば、この地には欧米人向けのホテル「開化亭」が立っていた。当時からあった庭園を生かし、昭和初期の平屋造りの日本家屋を改装したのが飲食施設「開化亭」だ。四季折々の庭園を眺めながら、食事や喫茶を楽しめる。
 食事メニューは山海の幸を使ったうどんがメイン。なかでも旬の魚の天ぷらがのった「季節の魚天うどん」が人気だ。もちもちっとした麺にやさしい味わいのだしが、じんわりと体に染みる。開化亭を目当てに訪れる人も多いそうだ。

ガラス戸に昔ながらのゆがみが見られる「開化亭」。食後は庭園散歩もおすすめ。
自家源泉で作った温泉卵と小鉢が付いた「季節の魚天うどん」(2,200円)。

DATA

岡田美術館

TEL:0460-87-3931

住所:神奈川県足柄下郡箱根町小涌谷493-1
開館時間:9時~17時(最終入館16時30分、開化亭は11時~16時30分L.O.)
休館日:12/31、1/1、展示替え期間
入館料:一般・大学生2,800円
箱根登山電車箱根湯本駅からバス20分

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仙石原

光と緑あふれる空間で
芸術とスイーツを味わう

まるで森の中にいるようなカフェ。移ろいゆく光を感じながら作品の余韻をゆったりと味わえる。

富士箱根伊豆国立公園内・台ヶ岳山麓のゆるやかな傾斜地に位置するポーラ美術館。建物の大部分を地下に置いているため、​​高さが地上8mに抑えられ、森に溶け込むように立っている。建物の外には全長約1kmの「森の遊歩道」があり、野外彫刻や四季折々の植物、野鳥の声を楽しみながら散策できる。
 美術館の中に入っても、森との一体感が薄れることはない。「カフェ チューン」には自然光が降り注ぎ、広い窓からは緑が見える。5月19日までは、開催中の企画展「モダン・タイムス・イン・パリ 1925」と、1977年にパリで創業したチョコレート専門店「ラ・メゾン・デュ・ショコラ」がコラボレーションしたメニュー「イニシアシオン メゾン」を味わえる。やや苦味のあるダークガナッシュや甘酸っぱくさわやかな味わいのフランボワーズのソルベなど5品が並ぶセットプレートで、チョコレートの多彩な味わいを堪能できる。

ラウル・デュフィ「パリ」(1937年)。「色彩の魔術師」とも呼ばれるデュフィがパリの景観を描いた一枚。5/19㈰まで展示。
ボンボン・ドゥ・ショコラ、フィナンシェなどを味わえる「イニシアシオン メゾン」(2,000円)。

DATA

ポーラ美術館

TEL:0460-84-2111

住所:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285
開館時間:9時~17時(最終入館16時30分、カフェは10時~16時30分L.O.)
休館日:無休(展示替えによる臨時休館あり)
入館料:大人1,800円(6/8から2,200円)
箱根登山電車箱根湯本駅からバス40分

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仙石原

本格ステーキを味わいながら
ガラス芸術の余韻に浸る

大自然を眺めながら「うかい特選牛サーロインステーキセット」(6,600円)を堪能できる。

 色鮮やかで、やさしい透明感が魅力のヴェネチアン・グラス。その歴史は古く、古代ローマ帝国のローマン・グラスから始まると言われている。そんなヴェネチアン・グラスを専門とするのが、箱根ガラスの森美術館だ。館内にはオリジナルグラスなどを作ることができる体験工房や、10万点のガラス商品を扱うショップもあり、まさにガラスを「見る・作る・買う」を満喫できる。
 鑑賞後は、大涌谷と四季の山々を眺望する「Caffe Terrazza Ukai」へ。鉄板料理「うかい亭」を運営する、うかいグループの総料理長による本格メニューを味わえる。店一押しは「うかい特選牛サーロインステーキセット」。極上和牛を外は香ばしく、中はしっとりと焼き上げた一品で、肉本来の味わいが楽しめる。
 店内では1日6回、ピアノやバイオリン、カンツォーネなどの生演奏も行われる。新緑の時期は自然を感じられるテラス席がおすすめだ。

生演奏は各回15分ほど。日によって演奏者が変わる。
1500年ごろの点彩花文蓋付ゴブレット。花文や点綴(てんてい)文様が坏身(はいしん)全体に装飾されている。
照明を当てると、鮮やかなコバルト・ブルーの色が透けて見える。

DATA

箱根ガラスの森美術館

TEL:0460-86-3111

住所:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原940-48
開館時間:10時~17時30分(最終入館は17時)
休館日:不定休(成人の日の翌日から11日間)
入館料:大人1,800円
箱根登山電車箱根湯本駅からバス25分

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強羅

約130種類の苔が息づく
神秘的な緑に包まれて一服

漆黒のテーブルに映る風景も味わい深い。季節に合わせて器も変わる。「季節のお菓子と抹茶セット」(720円)。

 1952年開館の箱根美術館は、箱根で最も歴史のある美術館。国の名勝「神仙郷」に立つため、地形を生かして作られた庭園も見どころだ。美術館としては珍しく、展示室には多くの窓があり、自然光の下で日本陶磁器を中心に約100点の作品を鑑賞できる。
 明星ヶ岳、浅間山、相模灘が連なるような風景を望む庭園「石楽園」を通り過ぎると、茶室「真和亭」が佇む。半円形のテーブルが特徴的な立礼席で抹茶と季節の和菓子をいただける。
 目の前に広がる苔庭には現在約130種類の苔が生え、モミジが植わる。モミジは庭から望む山々より高くならないよう、細やかな手入れがされている。
 茶室で出される抹茶は美術館独自の「MOA自然農法」産。まろやかでコクがあり、旨みも感じられる。愛知の老舗から取り寄せる和菓子には、季節に合った名前を独自に付けているそうだ。名前の由来とともにじっくり味わいたい。

新緑の時期には緑に包まれた神秘的な風景が広がる。
古墳時代の埴輪が並ぶ展示室。珍しいウサギの埴輪は必見。

DATA

箱根美術館

TEL:0460-82-2623

住所:神奈川県足柄下郡箱根町強羅1300
開館時間:9時30分~16時30分(3月までは16時まで、最終入館は閉館の30分前)
休館日:木曜(祝日の場合は開館)、年末年始、展示替え日
入館料:一般1,300円(4/1から1,430円) 
箱根登山ケーブルカー公園上駅から徒歩1分

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強羅

作品とともに味わう
こだわり素材のスイーツ

開放的な空間が心地良いカフェ。風を受けてくるくると回るロバート・マンゴールドの「風の歌V」が見える。

 雄大な山々と広い空をバックに作品が点在する彫刻の森美術館は、国内初の野外美術館だ。岡本太郎やロダン、ムーアら、近現代を代表する彫刻家の名作が約120点展示されている。
 作品を眺めながら遊歩道を進むと、敷地の奥に「The Hakone Open-Air Museum Café」が現れる。芝生の展示場に面しており、休憩しながら作品を眺められるのがうれしい。人気メニューは「ジェラート・コン・パーネ」。バターと卵をぜいたくに使ったブリオッシュに、南足柄・まつが農園の新鮮な素材を用いたジェラートなどがサンドされている。この日選んだのは、イタリア・DOMORIのカカオアイスクリーム。濃厚な味わいだが、後味はさっぱりしていてブリオッシュとの相性も抜群だ。 
 カフェ内のショップには全国からセレクトした食品や雑貨も並ぶ。美術館は作品を通じて作り手と出会う場。その考えは、カフェにも通じているようだ。

高さ5mの大型作品、ニキ・ド・サン・ファール「ミス・ブラック・パワー」。
「ジェラート・コン・パーネ」(写真左、600円~)、「はちみつレモンソーダ」(同右、500円)。

DATA

彫刻の森美術館

TEL:0460-82-1161

住所:神奈川県足柄下郡箱根町ニノ平1121
開館時間:9時~17時(最終入館16時30分)
休館日:無休 
入館料:大人1,600円(4/1から2,000円)
箱根登山電車彫刻の森駅から徒歩2分

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仙石原

ラリックの装飾に囲まれ
優雅なティータイム

食器のデザインは実際に使用されていた当時の復刻版。ティータイム(2,200円)は当日先着順。

 フランスを代表する宝飾とガラスの工芸家、ルネ・ラリック。彼が生まれたシャンパーニュ地方と同じく、自然豊かな箱根・仙石原の地にあるのが箱根ラリック美術館だ。約1500点のコレクションから約230点を展示。作品を通じてラリックの生涯を知ることができる。
 ラリックは60歳を超えた頃からガラスを使った空間装飾にも挑戦した。その作品を間近に見ることができるのがオリエント急行のサロンカーだ。カフェ・レストランがある建物内に、パリと南仏を結ぶ「コート・ダジュール特急」として活躍していた実物の車両を展示している。
 車内に装飾された150枚以上のガラスパネルは、ギリシャ神話に登場するワインの神・バッカスがモチーフ。彫刻的なその作品には鏡面加工が施されており、外光や照明を反射し、やさしい光で空間を包み込む効果があるという。車内ではオリジナルブレンドの紅茶やハーブティー、パティシエが作るデザートをいただける。フランスの地を走っていた頃も、きっと多くの乗客がこの空間に癒されたのだろう。

1929年製の車両は外観もシック。当時にタイムスリップしたような気分に。
1927年制作の花器「バッカスの巫女たち」。この頃からラリックは身体表現にも取り組んだ。

DATA

箱根ラリック美術館

TEL:0460-84-2255

住所:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原186-1
開館時間:9時~16時(最終入館は15時30分)
休館日:第3木曜(8月は無休)、臨時休館あり 
入館料:大人1,500円
箱根登山電車箱根湯本駅からバス30分

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